スピードが運転に与える影響

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トラックは、車体重量が重く重心が高いなどの特徴があるため、スピードの出し過ぎによる影響は一般車両よりも格段に大きく、衝撃力や遠心力が強くなります。衝撃力はスピードに比例して大きくなり、車両重量の大きいトラックはそれにも増してさらに衝撃力が大きくなります。例えば、スピードが20km/hの時の衝撃力よりも40km/hの時の方が衝撃力は4倍強くかかり、60km/hの時にはさらに9倍の強さの衝撃力がかかります。トラックは、車体重量が重たく積荷によっては重心が普段よりも高い場合もあり、カーブでは遠心力が強く働くこととなり横転などの危険性が高くなります。雨天時には、タイヤと路面の間に水が入り込み、車が水の上を滑るようになりハンドルもブレーキも効かなくなる「ハイドロプレーニング現象」などが起こるために危険性がさらに増します。

スピードをコントロールした運転

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スピードの出し過ぎは、重大事故の危険性が非常に高くなります。そのため、道路交通法で定められている最高速度を遵守し、安全な速度と車間距離を保つことが必要です。下り坂ではスピードが出やすいので、ブレーキ操作などに注意します。フットブレーキを多用すると、摩擦材が過熱されて、素材のゴムや樹脂などが設定された耐熱温度を超えて分解・ガス化し、これがブレーキローターとの間に入り込むとガス膜が潤滑油のような働きを起こして摩擦が弱くなってしまう「フェード現象」や、「フェード現象」が発生したままブレーキをかけ続けると熱がブレーキフルードにまで伝わり、フルードの沸騰によって完全に制動力が失われてしまう「ベーパー・ロック現象」が生じます。荷物を搭載した状態で下り坂を走行すると、通常よりもスピードが速くなるため、減速しようとすると通常よりも大きなブレーキ力が必要になり、「フェード現象」や「ベーパー・ロック現象」が起こりやすくなります。これではブレーキが一切効かなくなってしまう危険性が高いので、下り坂では特に、できるだけエンジンブレーキや排気ブレーキを活用するよう心がけてください。上り坂ではスピードが低下しやすいので、スピードメーターを確認しながらスピードをコントロールしましょう。もしも登坂車線がある道路では、登坂車線を利用してください。
安全な速度を守ることと同じように車間距離を保つことも大切です。速度が60km/h以下の場合は、走行速度の数字から15を引いた、45mほどの車間距離が必要です。速度が60km/hを超える場合は、走行速度の数字と同じ車間距離が必要です。

ドライブレコーダーなどを活用したトラックの危険性の認識

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ドライブレコーダーは、事故やヒヤリハットにより急ブレーキや衝撃を受けると、その前後の映像を自動的に記録するものです。加速度やブレーキなどのデータも取得でき、常時記録ができるドライブレコーダーもあり、普段の運転も確認できるので事故防止につながります。ドライブレコーダーの映像は、実際のトラック事故やヒヤリハットの実態がわかることから、具体的に「何が要因で事故が起こったのか」「どのような状況であったか」「ドライバーは何を見落としていたのか」などの事故の危険性を実際の映像で確認できます。デジタルタコグラフの運行記録などと合わせると、どこでスピードが出ていたのか、ブレーキを踏んだのかなどが分かり、これもトラックの危険性の認識するためにとても有効です。デジタルタコグラフなどには、ブレーキ信号の取得により、居眠り時などに起こる特有の速度の変化を検知し、警告音などでドライバーに注意を促す機能が付いているものもあります。ヒヤリハットを回避し、安全運転をサポートする機能の活用も有効です。

 
引用参考  自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル