前回、トラックによる交通事故を防ぐためには「十分睡眠をとる」ことと「きちんと休む」ことが大切であることをお伝えしました。今回はそれを踏まえて、過労運転を防ぐためにできることをお話しいたします。
過労運転による事故の危険性
車の運転、特にトラックによる輸送は、長時間連続で一瞬たりとも手が休めらない上に運転中の息抜きが許されないもので、精神的に負担になります。そのため疲労が蓄積されやすいと言われています。トラック運送事業において、ドライバーの深夜や早朝の長時間労働によって慢性的に休養不足になり、ドライバーが過労になりやすい状況が発生しやすいのが現状です。長距離運行の際に車中泊をしたりすると、悪い睡眠環境により疲労が回復されずに過労運転につながります。さらには、積荷の積み下ろしや運行中の積荷への配慮、荷主への対応などもドライバーに負担がかかる原因になりえます。このような肉体的、精神的な疲労からくる一瞬の気の緩みが大事故につながってしまうのです。
過労運転による事故を防止する対策や措置をおろそかにしたまま事故を起こすと、賠償金の支払いや翌年度の損害保険料の上昇などの民事責任、業務上過失致死傷罪などの刑事責任、事業停止等の行政処分による行政責任が発生します。さらには会社のイメージダウンにより取引先との関係が悪化すると売り上げも減少し、事業を運営する上で様々な悪影響が出ます。
過労のメカニズム
過労を引き起こさないようにするためには、まず過労の元となる要因や過労の表れ方など、過労のメカニズムを正しく理解し、過労にならないような運行方法や睡眠の取り方などを推奨、実践することが必要です。
過労の元となる要因は、ドライバーの日常生活から運転の環境に至るまで、広い範囲に及んでいます。ドライバーは自身の健康状態を正しく認識し、疲労を蓄積しないように心がけましょう。それと同時に運行管理者は過労の本質をよく理解し、安全な運行を遂行できるように配慮しましょう。
過労運転の要因としてまず挙げられるのが、ドライバーの運転前の生活環境です。
十分な休息や睡眠がとれていますか?
家族や友人との関係は優良ですか?
上司や後輩との関係は職場環境は優良ですか?
通勤時間や通勤ラッシュなど、通勤時のストレスはないですか?
余暇の楽しみがありますか?
偏食や不規則な食事、過度な飲酒などの生活習慣の偏りや運動不足なども、疲労の溜まりやすい健康状態になります。私生活において問題を抱えている人は、さらにストレスが溜まりやすくなり、悪循環です。
労働条件や運転環境など、運転中の要因も多数あります。
休憩時間は十分に取れていますか?
到着時間などの制約がありますか?
残業はありますか?
運転中の車内の騒音や振動は気になりますか?
車の整備状況はどうですか?
天候や運転時間(日中、夜間)はどうですか?
交通渋滞はどうですか?
運転時間や走行距離は適切ですか?
恒常的な残業や長時間長距離の乗務、頻繁な深夜勤務や休憩時間の不足などにより、疲労が蓄積されやすくなります。座席での仮眠による睡眠の質の悪さが常態化した状況での勤務は、眠気やだるさを感じるため運転に集中することが困難になります。
ドライバー自身の適正によっても、過労の度合いが変わってきます。
自身の体力、持久力はどうですか?
体調は良いですか?
持病はありませんか?
視聴覚機能は正常ですか?
せっかちだったりおっちょこちょいな部分はありませんか?
安全に対する意識は高いですか?
運転の熟練度はどうですか?
運転したことのある道路を走っていますか?
このように、トラックの運転において過労が生み出されるメカニズムは、疲労の蓄積されるような勤務状況、睡眠不足などに加えて、心理的なストレスや生活習慣の悪さなどが伴うことによって、過労状態に陥ります。
次回は、過労の表れ方や、疲労を蓄積しない睡眠の取り方などについてご紹介いたします。
引用参考 トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル
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